認知症に
ついて
dementia

認知症とは、病気によって脳の神経細胞が壊れ、その影響で理解力や判断力が少しずつ低下し、日常生活や社会生活に支障が出る状態を指します。年齢によるもの忘れとは異なりますが、脳の炎症やホルモン異常など、原因となる病気を治療することで改善する場合もあります。
そのため、「認知症かもしれない」と感じたら、早めに受診して原因を調べることが大切です。早期の対応で、身体や生活への影響を抑えやすくなります。

認知症
認知症ともの忘れの
違いについて
  認知症 老化によるもの忘れ
原因 脳の神経細胞の変性や脱落 脳の生理的な老化
もの忘れ 経験したことをすべて忘れる 経験したことの一部分を忘れる
症状の進行 だんだん進行する あまり進行しない
判断力 低下する 低下しない
自覚 忘れたことの自覚がない 忘れっぽいことを自覚している
日常生活 支障がある場合が多い 支障は少ない
認知症
原因 脳の神経細胞の変性や脱落
もの忘れ 経験したことをすべて忘れる
症状の進行 だんだん進行する
判断力 低下する
自覚 忘れたことの自覚がない
日常生活 支障をきたす
老化によるもの忘れ
原因 脳の生理的な老化
もの忘れ 経験したことの一部分を忘れる
症状の進行 あまり進行しない
判断力 低下しない
自覚 忘れっぽいことを自覚している
日常生活 支障はない

認知症の種類

認知症を引き起こす病気はいくつかありますが、よく見られるのはアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症の4つで、「4大認知症」と呼ばれています。このうちアルツハイマー病の割合が大きいです。
高齢になると、神経原線維変化型認知症や嗜銀顆粒性認知症といった病気も見られるようになり、アルツハイマー病と血管性認知症が重なるケースも増えてきます。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は認知症の原因の中でも大きな割合を占める病気です。
「同じ話を繰り返す」「ものの置き場所がわからない」などのもの忘れから始まります。進行すると薬やお金の管理が難しくなり、やがて身のまわりのことも一人で行えなくなります。
脳にはアミロイドβというたんぱく質がたまり、神経細胞が徐々に壊れていきます。

主な症状
  • 同じ話をくり返す
  • 一人で歩きまわる
  • 話している言葉が理解できない
  • 怒りっぽくなる
レビー小体型認知症

レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多く、全体の1割~2割を占めています。
実際にはいない人が見える幻視や、日によって認知機能が変わることが特徴です。
歩くのが遅くなるなどのパーキンソン症状や、認知症が始まる前から睡眠中に大声を出したり手足を動かしたりすることもあります。

主な症状
  • 会話がかみ合わなかったり、ぼんやりしたりする
  • いない人などが見える幻視
  • 歩くのが遅くなる
  • 睡眠中に大声を出したり手足を動かしたりする
血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など脳の血管障害が原因で起こります。
もの忘れに加え、歩行のふらつきや言葉の出にくさ、食べ物の飲み込みにくさなどの症状が見られます。損傷部位によって症状は異なり、階段を上るように段階的に悪化する傾向があります。
アルツハイマー型認知症と重なる場合もあります。

主な症状
  • 手足のまひがある
  • 言葉が出にくい
  • 飲み込みの障害がある
  • 感覚障害がある

※損傷部位によって症状は異なります。

前頭側頭葉変性症

前頭側頭葉変性症は、前頭葉や側頭葉の神経の変化で起こる認知症です。記憶よりも性格や行動、言葉に変化が現れやすく、比較的若い年代でも発症します。
主な症状は、無関心や衝動的な行動、言葉が出にくくなること、判断や計画がしづらくなることなどで、初期では記憶の変化はあまり目立ちません。
近年、前頭側頭葉変性症の患者数が増加傾向にあることや、症状や病態に関する研究が進んだことで、4大認知症の一つとして認識されるようになりました。

認知症の種類の違い
について
  アルツハイマー型認知症 レビー小体型認知症 血管性認知症
脳の変化 老人斑や神経原線維変化が、海馬を中心に脳の広範囲に出て、脳の神経細胞が死滅していく レビー小体という特殊なものができることで、神経細胞が死滅してしまう 脳梗塞・脳出血などが原因で、脳の血液循環が悪くなり、脳の一部が壊死してしまう
画像で分かる脳の変化 海馬を中心に脳の萎縮が見られる はっきりとした脳の萎縮は見られないことが多い 脳が壊死したところが確認できる
初期症状 もの忘れ 幻視・妄想・うつ症状・パーキンソン症状 もの忘れ
特徴的な症状 認知機能障害・妄想・徘徊など 認知機能障害・認知の変動・幻視・妄想など 手足のしびれ・まひ・感情のコントロールがむずかしい
経過 記憶障害から始まり広範囲な障害へ徐々に進行する 調子の良いとき・悪いときを繰り返しながら進行する 原因となる疾患によって異なるが比較的急に発症し、段階的に進行していくことが多い
アルツハイマー型認知症
脳の変化 老人斑や神経原線維変化が、海馬を中心に脳の広範囲に出る。脳の神経細胞が死滅していく
画像で分かる脳の変化 海馬を中心に脳の萎縮が見られる
初期症状 もの忘れ
特徴的な症状 認知機能障害・妄想・徘徊など
経過 記憶障害から始まり広範囲な障害へ徐々に進行する
レビー小体型認知症
脳の変化 レビー小体という特殊なものができることで、神経細胞が死滅してしまう
画像で分かる脳の変化 はっきりとした脳の萎縮は見られないことが多い
初期症状 幻視・妄想・うつ症状・パーキンソン症状
特徴的な症状 認知機能障害・認知の変動・幻視・妄想など
経過 調子の良いとき・悪いときを繰り返しながら進行する
血管性認知症
脳の変化 脳梗塞・脳出血などが原因で、脳の血液循環が悪くなり、脳の一部が壊死してしまう
画像で分かる脳の変化 脳が壊死したところが確認できる
初期症状 もの忘れ
特徴的な症状 手足のしびれ・麻痺・感情のコントロールがむずかしい
経過 原因となる疾患によって異なるが比較的急に発症し、段階的に進行していくことが多い

治療について

主な治療方法

認知症の進行をゆるやかにするために、内服薬による治療を行っています。
また、日々の過ごし方やご家族の接し方についてもアドバイスを行い、地域の支援機関と連携しながら、落ち着いた日常が送れるよう支援しています。